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福岡地方裁判所 昭和37年(ワ)609号 判決

原告 檀庫吉 外四五名

被告 手島直三郎 外一名

主文

原告らが、別紙目録記載の土地につき、各自、持分五一分の一の所有権を有することを確認する。

被告らは、各自、各原告に対し、別紙目録記載の土地につき、持分二〇四分の一あてを各原告に移転する所有権の一部移転登記手続をせよ。

被告らは、各原告に対し、連帯して、金四〇、四九〇円およびこれに対する昭和三六年五月一八日から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告らの連帯負担とする。

事実

第一、双方の求める裁判

一、原告

主文同旨の判決および主文第三、第四項につき仮執行の宣言

二、被告

「原告らの請求を棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。」との判決

第二、双方の主張

一、請求の原因

(一)  別紙目録記載の土地、すなわち

福岡市大字野多目字長尾八六二番地の二三

一、山林 一反四畝二歩 (以下甲地という)

同所 同番地の二四

一、山林 一反七畝一二歩(以下乙地という)

および左記土地、すなわち

同所 八六三番地の二

一、山林 一反九畝二〇歩(以下丙地という)

は、もと国有地であつた。

(二)  右甲、乙、丙地は、通称野多目新池に直面する山林であるが、右新池は、野多目部落における水田耕作に不可欠なかんがい用貯水池なので、右貯水池の水源涵養林として、昭和二七年三月一日、自作農創設特別措置法第四一条第二項の規定により、国から、野多目部落内に居住する農家の世帯主で当時福岡市大字野多目に水田を所有していた者全員、すなわち、原告ら四六名、被告二名、訴外手島滝次郎、同堀内弥蔵、同川野又六以上合計五一名の共有として売渡された。

(三)  ところが、右土地の登記については、種々の事情から当時の部落有志五名の共有名義にすることとし、昭和三三年二月二八日福岡法務局老司出張所受付第一、一〇三号をもつて、被告両名、訴外手島滝次郎、同堀内弥蔵、同川野又六の五名の共有名義で所有権保存登記を経由した。

その後右甲、乙、丙地については、昭和三六年五月一七日福岡法務局老司出張所受付第四三九七号をもつて、訴外堀内弥蔵の持分につき、訴外堀内三郎へ相続による持分所有権移転登記がなされ、また、甲、乙地については、同年一〇月三日同法務局同出張所受付第九一五〇号をもつて、訴外川野又六の持分につき、訴外川野義光に相続による持分所有権移転登記がなされた。

(四)  しかるに、昭和三六年一〇月一三日、右登記名義人らは、甲、乙両地を訴外桂武観に売渡し、同日福岡法務局老司出張所受付第九四四七号をもつて所有権移転登記を経由し、また同年四月二二日丙地を訴外村野スギに売渡し、同年五月一七日同法務局同出張所受付第四四二六号をもつて所有権移転登記を経由した。

(五)  しかしながら右甲、乙、丙地は前記五一名の共有地であるから右登記名義人らには右土地全体の処分権はない。よつて原告らは右五名に対し、甲、乙、丙地についてなされた右売買による所有権移転登記を抹消するよう厳重催告したところ、昭和三七年四月一九日被告両名および訴外堀内三郎、同川野義光は、原状に復するため訴外桂武観より右甲、乙両地を買戻し、同日福岡法務局老司出張所受付第三一五五号をもつて、右四名の共有名義で所有権取得登記をなした。

(六)  被告らは、甲、乙両地の原告らの持分を争つているので、原告らは被告らに対し、甲、乙両地につき、原告らが各五一分の一の持分所有権を有することの確認を求めるとともに、右持分所有権に基づき甲、乙両地について持分二〇四分の一あてを各原告に移転する所有権の一部移転の登記手続を求める(各被告が現在登記簿上有している持分は各四分の一であるが、ほんらい有すべき持分は五一分の一であるから、五一分の一のみを各被告に残しその余を原告ら四六名と訴外手島滝次郎の合計四七名で分配すべきこととなる。なおこの場合、訴外堀内弥蔵、同川野又六の各相続人については被告らと同様現在登記簿上有している四分の一の持分のなかから五一分の一を残せばよいから、被告らに分配を請求する者の中に入れる必要はない。したがつて原告一名から被告一名に対して移転を請求する持分は、

(1/4-1/51)×1/47=47/204×1/47=1/204

ということになる。)。

(七)  また、丙地については、買戻しはなされていない。しかし、がんらい、右丙地は、前記五一名の共有であるから、被告らによつてなされた村野スギに対する売買はほんらい無効であるが、善意の第三者である訴外村野に対抗できないため、原告らは、被告らの右行為によつて丙地の持分権を喪失するにいたつた。しかも被告らの右行為は丙地が前記五一名の共有であることを知りながらなされたもので、被告らの故意に基づく共同不法行為である。ところで、右土地は、右不法行為当時、時価坪当り金三、五〇〇円、全体で金二、〇六五、〇〇〇円の価値が存していたので各原告は右五一分の一である金四〇、四九〇円相当の損害を被つたこととなる。

よつて、原告らは被告らに対し、各原告に、連帯して右損害賠償金四〇、四九〇円およびこれに対する不法行為の日の後である昭和三六年五月一八日から支払いずみまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二、被告らの答弁

請求原因第一項は認める。同第二項は否認する。同第三項中原告ら主張のような各登記のなされていることは認めるが、その余の事実は否認する。同第四項は認める。同第五項中、被告らおよび訴外堀内三郎、同川野義光が、訴外桂武観より甲、乙両地を買戻し、原告ら主張のような登記を経由していることは認めるが、その余の事実は否認する。同第六項中被告らが原告らの持分を争つていることは認めるが、その余は争う。同第七項は否認する。

第三、証拠<省略>

理由

一、請求の原因第一項の事実は当事者間に争がない。

二、そこで本件甲、乙、丙地(以下本件土地という)が誰に対し売渡されたかについて判断する。

(一)  当裁判所の検証の結果によると、本件土地は、野多目部落のかんがい用貯水池である通称野多目新池の北側に位置するが、同池の南側の土地が比較的傾斜がゆるやかで池との間に約二、五メートル幅の道路をはさんで池と直接には接していないのに対し(同池の西側は平原池とまた同池の東側は上の池とそれぞれ堤塘を介して接している)、本件土地は傾斜が急で直接同池の端まで迫つており、これを開墾して畑とするときは、土砂が池に流入し、水利を害するような地形であると認められること。

(二)  成立に争のない乙第一号証の二によれば、本件土地は用途畑として売渡されているが、用途畑(すなわち開墾して農地とすべき土地と解される)として売渡された場合には、これを開墾するかしないかの自由はなく後にいわゆる成功検査が行われ(農地法第七一条、第七二条、農地法施行法第一二条参照)、開墾を完了していないことまたは売渡令書に記載された用途に供していないことが明らかとなつたときは、いわゆる買戻し(買収処分)の手続がとられることとなつているところ、成立に争のない乙第四号証によると本件土地以外で売渡しをうけた土地については厳重な成功検査が行われ、その結果に基づいて減反、買戻し等の措置がとられていることが認められるにもかかわらず、当裁判所の検証の結果によれば、本件土地については売渡処分後開墾に着手された形跡は全くないことが認められるのに成功検査でなんら問題とされておらず、したがつて前記乙第一号証の二の記載は正確を欠き開墾すべき土地として売渡されたものではないとの疑が強いこと。

(三)  前記乙第一号証の二によれば、本件売渡令書には用途を畑、所有者を被告両名および訴外手島滝次郎、同川野又六、同堀内弥蔵(以下被告らおよび訴外人らという)計五名との記載があるが、これを文字通り右五名に対し本件土地(三筆)の一部をそれぞれ売渡す趣旨と解すれば各人に対する売渡土地の範囲の特定を欠き無効と解さざるをえないこと(最高裁判所昭和三一年六月一日判決、最高裁判所民事判例集一〇巻六号五九三ページ参照)。

(四)  そこで右処分を有効として扱うためには右記載を共有売渡(持分売渡)の趣旨と解さざるをえないが自作農創設特別措置法(以下自創法という)は「耕作者の地位を安定しその労働の成果を公正に享受させるため、自作農を急速かつ広汎に創設」することを目的とする、すなわち耕作者に耕作地を所有せしめることを目的とするものであるから、共有者の土地を買収して売渡処分をなした場合に一部の共有者につき買収処分が無効となつたためその共有者の持分につき売渡処分が無効とされ旧持分権者と売渡しをうけた者が共有となるようなやむをえない特殊の例外を除き、農地(もしくは開墾して農地とすべき土地)については、当初から共有関係を生ずるような売渡処分(持分の売渡し)をなすことは許されない(他の持分権者に持分を売渡して単独所有とするような売渡処分が許されることはもちろんである)と解すべきであるのに対し、附帯施設(もしくは開発後の土地の利用に供すべき土地)については性質上多数人の利用に供せられるものがあり(たとえば、ため池、堤塘、水利権等)、かようなものについては分割して売渡すのを適当としない場合も考えられるのであつて、かような場合団体に対し売渡すことも考えられるが、これによらず個人に対しその持分を売渡し多数人の共有とすることも許されないわけではないと解せられるので、本件土地についても令書の記載どおり用途畑として多数人に持分が売渡されたと解するよりも開発後の土地の利用に供すべき土地として多数人に持分が売渡されたものと解するのが本件事案に照らし妥当であること。

(五)  前記認定のように本件土地が農地の開発に供すべきものではなく、開発後における土地の利用に供すべきものとして売渡されたものとすれば、本件土地を被告らほか三名のためにのみ利用に供すべき特段の事情は認められないのに対し、前記(一)認定の事情を考慮に入れると後記認定にかかる野多目新池附近の旧陸軍病院用地の売渡しをうけた原告ら被告らおよび訴外人らの五一名の水田耕作者らにとつては、野多目新池の水源涵養林として利用するのに適当であり、またその利用に供されていたと認められる状況にあること(もつとも当裁判所の検証の結果によれば水源涵養林といつても積極的に植林を要するものでなく、たんに本件土地を開墾せず草木の自生にまかせておくだけでその目的を達しうると認められる)。

(六)  成立に争のない甲第一号証および弁論の全趣旨により成立を認める甲第二号証によると売渡令書記載の所有者のうち訴外手島滝次郎および売渡令書記載の所有者堀内弥蔵の相続人堀内三郎、同川野又六の相続人川野義光は、本件土地が原告ら、被告ら、訴外人らに対し売渡されたものであることを認めて和解をしていること。

以上の諸事実が認められ、右事実に成立に争のない甲第三、第五号証、乙第一号証の一、二、証人簑原敏郎の証言、原告大野為雄、同下川勇、同末安貢、同檀庫吉、同赤司菊次郎各本人尋問の結果をあわせ考えると次の事実を認めることができる。

すなわち、昭和二三年一一月福岡市大字野多目所在の旧陸軍病院用地であつた国有地について、自創法第四一条の規定により野多目部落民(地元増反者、入植開拓者、病院に働いていた農夫、軍に農地を買収された者)に約一七町歩が売渡されたが(第一次配分)、その後残地についてさらに売渡しがなされることとなつた(第二次配分)こと。右売渡手続は、福岡県知事より野多目開拓農業協同組合に対し国有地売渡しの方針および要領が指示され、右組合においては右指示に従い組合役員が配分原案を作成し、組合総会においてこれを協議承認し、その案どおり県農地開拓に具申され、同課係官が右案を審査し、とくに違法不当な点がなければ知事が右案に従つて売渡処分をなす取扱いとなつており、原案が変更された例はなかつたこと。本件土地は当初牛島伝蔵、佐々木照明、篠塚良次郎の三名に各一筆づつ売渡される計画となつていたこと。ところが、野多目部落に隣接する和田部落においても同様国有地の売渡しが行われていたが、同部落のかんがい用貯水池である和田池の周辺の山林を同池の水源涵養林として保存することとし、右山林を部落民個人に分割して売渡さず、部落民の共有としたうえ登記簿上三名の所有名義とした例を聞き伝え、昭和二四年頃、野多目開拓農業組合の席上で野多目部落においても野多目部落のかんがい用貯水池である野多目新池の周辺の山林を同池の水源涵養林として保存しようということとなり、右三名に対する売渡しの計画をとりやめ、野多目部落内居住の農家の世帯主で、当時福岡市大字野多目に水田を有しこれを耕作していた者(原告ら、被告らおよび訴外人らの五一名)の共有として売渡しをうける計画となつたこと。しかし右五一名全員の名義で登記をすることは手続上繁雑ではないかと考えられたため、昭和二七年六月頃、当時の野多目開拓農業協同組合組合長川野繁次郎、同組合理事末安貢、前組合長篠塚良次郎、福岡県農地開拓課若狭、荒津両事務官の五名で協議した結果、右五一名のうちから当時の部落の有力者でありかつ年長者でもあつた被告らおよび訴外人らの五名を選び、その同意をえて、同人ら五名を右共有者全員の代表者とする趣旨でその名義で本件土地の売渡しをうけ、同人らの名義で所有権取得の登記をうけることとなつたこと。そこで右のように福岡県農地開拓課の係官の了解をえて本件土地について右五名を前記五一名の代表者とする趣旨のもとに野多目開拓農業協同組合において右五名名義の配分案を作成し、それが福岡県農地開拓課に具申され、それに基づいて県知事の売渡令書の交付が右五名あてでなされたこと。その後当局の都合上本件土地を含めて第一次、第二次配分の売渡しの土地全部について嘱託登記の手続が遅れていたので原告ら、被告ら、訴外人らは、右全部の土地について土地家屋調査士古賀某に依頼して、土地の測量、登記手続の促進をはかり、登記手続を完了し、本件土地については、被告らおよび訴外人らの五名の共有名義で所有権取得登記がなされたこと。

以上の事実が認められ、右認定に反する被告ら各本人尋問の結果は前記認定に供した証拠と比較して措信できず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。

もつとも以下(一)ないし(六)認定の諸事実は認められるけれども以下のような理由で右事実の存在からは右認定を左右するには足りないものである。すなわち

(一)  被告ら各本人尋問の結果によれば、本件土地の売渡代金は被告らおよび訴外人らの五名が支払つており、原告らはこれを支払つていないことが認められるけれども、前記乙第一号証によれば右代金は五六二円三二銭であつて、当時の(昭和二七年三月)物価に照らしても極めて低額であり、右五名より原告らに対しとくに償還の請求がなかつたため、原告らも進んで償還の態度に出ないまま放置されていたと解されること。

(二)  また被告ら各本人尋問の結果によると原告らのなかに現に水田の耕作をしていないものを含んでいることが認められるが、原告末安貢、同赤司菊次郎各本人尋問の結果によれば、本件売渡処分当時にはそれらの者も水田耕作者の資格を有していたと認められること(処分後に水田耕作をやめたからといつて当然に処分の効力が失われ、所有権を喪失するものではないことはいうまでもない)。

(三)  また本件土地を法人所有とせず共有にした場合、共有者の死亡、耕作の廃止、転居等によつて共有者間に複雑な法律関係が生ずるおそれは充分考えられるところであるが、本件土地の売渡しが計画された昭和二三年から昭和二七年頃までの間は、食料事情も現在ほど緩和されておらず、福岡市の郊外発展の見とおしも明らかではなく、水田耕作をやめ他に転出する者が続出するようなことが当然予測されるような状況にあつたとは解せられず、もともと本件土地を水源涵養林として水田耕作者の共有とする考えは、前記認定のように和田部落において和田池周辺の山林を共有とした例を聞き伝えてのことであつたような事情のもとでは、右例にならつて共有の形態をとり、構成員の変動にかかわらず権利主体の変動を生じない法人所有等の手段をとらなかつたこともあながち無理ではなかつたと解せられること。

(四)  また当裁判所の検証の結果によると本件土地上の立木を売渡処分前に伐採していることが認められるけれども、もともと本件土地は当初牛島伝蔵ら三名に売渡される予定であつたのを途中で計画を変更したものであること(伐採は当初の計画前であつたと認められる)、水源涵養林としては積極的な植林をしなくとも、開墾をせずたんに草木の自生にまかせることによつて目的を達しうる状況であつたことは前記認定のとおりであるから右伐採をもつて本件土地を水源涵養林とする計画がなかつたとはいえないこと。

(五)  また本件土地が被告らおよび訴外人らの五名の所有名義とされるについて裏契約書の作成が行われていないことは弁論の全趣旨から明らかであるが、一般に部落民の共有物を少数人の名義にしておくような場合には、むしろ裏契約書などの作成がないほうが通例であると考えられること。

(六)  また成立に争のない乙第七、第八号証によれば、本件訴訟の提起前被告らに対し野多目農事実行組合の名義で本件土地につき移転登記手続等を請求していることが認められるが、弁論の全趣旨によれば、原告らの大多数が右組合に加入していることから本件土地の所有関係について充分な検討を加えることなく、組合名義をもつて請求したと解せられること。

したがつて右(一)ないし(六)の事実によつては前記認定を左右するに足りないといわなければならない。

そこで前記認定の事実によれば、本件土地は、原告ら、被告らおよび訴外人ら五一名に対しその共有とすべく各人にその持分が売渡され、右五一名の共有(持分は平等と推定すべきである。)となつたと解するのが相当である。

三、もつとも前記認定の事実によると本件土地の売渡令書には、所有者として被告らおよび訴外人らの五名の記載しかなく、また用途畑と記載されているので、右のような令書の交付をもつて原告ら、被告らおよび訴外人ら五一名に対する有効な売渡処分があつたといえるかどうかが問題である。(自創法第四一条第二項、第二一条第一項参照)

しかしながら本件土地の売渡しを含めて、第一次、第二次配分に基づく売渡処分の手続が、事実上野多目開拓農業協同組合において計画案を作成して、その案が県農地開拓課に具申され、同課係官においてとくに違法と認めなければ、右案に基づいて県知事が売渡処分をなしており、それまで右案が変更されて処分がなされたことがなかつたという状況のもとにあり、県農地開拓課の係官および原告ら、被告ら訴外人ら各関係者間において、本件土地は前記五一名に対し野多目新池の水源涵養林として売渡されるものであり、便宜上令書の表示および登記名義を、右五一名の代表者とする趣旨で右五一名のなかから選んだ被告らおよび訴外人らの五名とすることが了解されていたような事情が認められる本件においては、右事情をあわせ考慮に入れれば、右令書の記載をもつて前記五一名に対する本件土地を水源涵養林として売渡す処分の表示と解せられないことはなく(令書の記載としてかしがあるとしても処分を無効ならしめる程度のものとはいえない)、したがつて右令書の交付をもつて前記五一名に対する本件売渡処分は有効になされたものと解するのが相当である。

四、そうすると本件甲、乙両地につき被告らが原告らの持分を争つていることは当事者間に争がなく、被告らにおいてその後原告らが右持分を喪失したことの主張立証のない本件においては原告らがそれぞれ五一分の一の持分所有権を有することの確認を求める請求は理由がある。

五、次に本件甲、乙両地につき、現に被告両名および訴外堀内三郎、同川野義光の四名の共有名義で所有権取得登記がなされていることは当事者間に争がない。

前記認定の事実および右事実によれば、本件甲、乙両地の真実の共有権者である原告らから被告に対し、甲、乙両地につき持分二〇四分の一(この数額については原告主張の請求原因第六項記載の計算を正当と認める)あてを各原告に移転する所有権の一部移転の登記手続を求める請求は理由がある。

六、本件丙地についてはこれを被告両名および訴外手島滝次郎、同堀内三郎、同川野又六の五名が昭和三六年四月二二日訴外村野スギに売渡し、同年五月一七日その旨登記を経由したことは当事者間に争がなく、弁論の全趣旨によれば右村野は本件丙地につき原告らが持分所有権を有していたことを知らなかつたと認められるので、右売買により原告らは本件丙地の持分権を失つたというべきである(本件丙地の登記簿上の所有名義を前記五名の者にしておいたことは前記認定の事実によれば原告らと右五名間の通謀虚偽表示と同視すべき事情にあると考えられるので、善意の第三者たる村野に対しては対抗できないと解される)。そして前記認定の事実によれば被告らは本件丙地につき原告らが持分権を有することを知つていたというべきであるから、被告らは本件丙地の右売却に当たつて原告らの権利を侵害することを知りながらなしたと認められる。そうすると被告らは原告らに対し連帯して右共同不法行為により原告に加えた損害を賠償すべき義務がある。

よつて損害額についてみると成立に争のない甲第四号証によれば、右不法行為当時本件丙地の時価は金二、〇六五、〇〇〇円であると認められる。そうすると各原告は右五一分の一である金四〇、四九〇円相当の損害を被つたというべきである。

よつて原告らが被告らに対し、各原告に、連帯して、右損害金四〇、四九〇円およびこれに対する不法行為の日の後である昭和三六年五月一八日から支払いずみまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める請求は理由がある。

七、以上原告らの本訴請求はすべて理由があるからこれを認容し訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九三条を適用し仮執行の宣言の申立は相当でないからこれを付さないこととし主文のとおり判決する。

(裁判官 越山安久)

(別紙)

物件目録

福岡市大字野多目字長尾八六二番の二三

一、山林 一反四畝二歩

福岡市大字野多目字長尾八六二番の二四

一、山林 一反七畝一二歩

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